ただ過ぎていく時間のなかで

今朝の毎日新聞に面白い記事が載っていたので紹介してみよう。

「ものもらい」何と呼ぶ? 読者の皆さんから寄せられた「共通語だと思っていたのに、よそで使って驚かれた言葉」には、人体にまつわる言葉が多く挙がりました。そこで今回は「体のパーツ」編。「ものもらい」や「鳥肌」といった病気や状態を指す言葉にも、多くの方言があります。【銅山智子】

 ◇「ばか」と「おひめさん」

 寄せられた情報の中で、最もバリエーションが豊かだったのは「ものもらい」。

 医学的には「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」といい、まぶたの縁や内側に黄色ブドウ球菌などの細菌が感染して起こる目の疾患だ。

 「学生時代、目にできものができた大阪出身の友人に『ものもらいだな』と声をかけたら『ちゃう、めばちこや』と言われた。そのとき隣にいた宮崎出身の友人は『それは、めいぼ!』と譲らなかった」(埼玉・40代)。「東京で『めばちこ』と言って『湖の名前ですか』と聞かれた」(大阪・30代)−−などの体験談も多かった。

 「ばか」(宮城)のように嫌悪感が伝わる言葉もあれば、「おひめさん」(熊本)「おきゃくさん」(佐賀)「おともだち」(沖縄)のように親しみのある呼称の地域もある。両極端の印象が、呼び名として存在しているのは興味深い。

 ロート製薬(大阪)は04年、全国約1万人を対象に「ものもらい」を何と呼ぶか調べた。同社の調査データを参考に、各都道府県で最もポピュラーな「ものもらい」の呼び名をまとめたのが地図だ。「呼び名は全部で250以上もあった。世代別にみると、10〜50代は共通して1位が『ものもらい』。若い人を中心に、標準語が浸透しつつあるようだ」と、同社広報調査室は話す。

【板垣博之】

毎日新聞 2006年11月1日 東京朝刊

http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/katei/news/20061101ddm013100072000c.html


言語学,とりわけ方言学の分野では,ある言葉を各地方で何と言うかを調べて,地図に表すという研究手法がありまして,柳田國男の「蝸牛考」やナイトスクープで調べられた「アホ・バカ分布考」は有名な話で。今日の記事は,目にできるできものを何と言うか調査した結果について書いてあるんですが,これが実に興味深い。と言うのも,筆者が大学で学んでいた頃,言語学を担当していた教授が講義で同じ質問を受講者に尋ねて,記事に載っているような種の回答が次々と飛び出したからでして,熊本では「おひめさん」って言うなんて,ビックリでしょ?じゃあ,「王子さん」はあるのか?なんて想像も膨らんで。ちなみに筆者は「めばちこ」と言ってるなぁ。