豆だけは入れてくれるな柿の種
5年生の国語で方言と共通語について学ぶ時間があるのだけれど,その調べ学習をしようとしていた矢先,毎日新聞のお馴染みのコラムを発見!ちなみに,筆者の生まれ育った地域では「かきのたね」だったな。
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20061206ddm013100102000c.html
続・呼び名で分かる:遊び編/上 「どれにしようかな、神様の…」に続く言葉は?え・菅野庸平 ◇「どれにしようかな、神様の言うとおり」に続く言葉は?
「どれ(どちら)にしようかな。神様の言うとおり……」。子どものころ、複数から一つを選ぶとき口ずさんだフレーズ、ありますよね。この後に、どういう言葉を続けましたか? 実は、数え切れないほどたくさんのバリエーションが存在するのです。こうした「遊び」にまつわる言葉を、2回に分けて紹介します。【銅山智子】
◇「柿の種」筆頭に100種−−毎日インタラクティブでアンケ
私(北九州市出身)の子どものころの定番フレーズは「あぶらむし 柿の種 けけけの毛虫がいましたよ」。同僚は「えー、何それ?」と驚いたが、確かにそう言っていたのだ。もちろん、北九州の人が皆こう言っていたわけではない。私自身、これらの言葉は順序を入れ替えたり、省略したりすることもあった。
そこで、毎日新聞のニュースサイト「毎日インタラクティブ」を通じてアンケートを実施。「神様の言うとおり……に続く言葉」を尋ねた。用意した選択肢は「鉄砲撃ってバンバンバン」「柿の種」「あべべのべ」「なのなのな」の四つ。どれにも当てはまらない場合や、さらに言葉が続く場合は、自由に記入してもらった。
その結果、集まった言葉は約100種類。出身都道府県別に分類し、1人でもその言葉を挙げた人がいれば、その都道府県で「使っている」と判断。都道府県数で“普及ランキング”を作った=表上。
◇「なのなのな」など東日本/「あぶらむし」西日本
◇「ご飯粒」「毛虫」九州/「あぷぷのぷ」東海
よく登場する言葉の1位は「柿の種」。北海道から鹿児島まで広範囲だが、おもに西日本で多く使われているようだ。「神様の言うとおり」の直後に続ける言葉に限れば、ランキングが入れ替わり、1位は「鉄砲撃ってバンバンバン」になる。東京、神奈川、愛知など大都市を中心に使われているが、西日本での認知度はあまり高くない。
さらに続ける場合は「もひとつ撃って(もひとつおまけに)バンバンバン」。「鉄砲撃って……」の後には「どんどこしょ」「どんどこどん」「死んじゃった」などの言葉を続けるバリエーションもある。
大ざっぱに分けて「なのなのな」「あべべのべ」「あのねのね」は東日本▽「あぶらむし」は西日本▽「ご飯粒(握り飯)」「毛虫」は九州▽「あぷぷのぷ」は東海地方−−で多く使われている。「柿の種」「握り飯」と聞けば「さるかに合戦」を連想してしまうが、こうしたフレーズには、親しんだ昔話なども影響しているかもしれない。
◇「ユリの種」「グリコ」
ランキング外の言葉には、いくつかの傾向があったので分類してみた=表左。神様以外の人にも続けて聞いたり、言うとおりにしたりするフレーズは「誰かに聞く」系としてまとめた。
分類に収まらなかったユニークな言葉もたくさんある。おならを連想させる「ぷっとこいてぷっとこいてぷっぷっぷ」は、大阪や京都ではポピュラーな言葉。「ユリの種」などと唱えたり、「1、2、3……」と数を数える例、「うさぎの耳が切れた。たぬきのしっぽも切れた」といった痛々しいフレーズも。「グリコ」や「チヨコレイト(チョコレート)」は、じゃんけん遊びの影響だろうか。
ちなみに、「神様の言うとおり」にもいくつかのバリエーションがあり、「天の神様」や「裏の神様」「天神様」と唱える人も少なくなかった。
◇奇数音カギ
実際にものを選ぶとき、指を差す回数をみてみよう。「柿の種」「なのなのな」などは5回指を差す。「鉄砲撃ってバンバンバン」は「てっ・ぽう・うっ・て・ばん・ばん・ばん」と7回だ。今回、寄せられた言葉をみると、多くは5や7のリズムでできていることがわかる。やはり、日本人には七五調のリズムがしっくりくるのだろうか。
わらべ歌に詳しい東京電機大講師の赤羽(あかば)由規子さん(70)によると「どれにしようかな」は、わらべ歌の中で「だるまさんがころんだ」や「いろはにこんぺいとう」などと同じ「唱え歌」に分類される。「子どもにとって『これを唱えながら選ぶと、いいものが自分に来る』という、おまじないの意味が強い歌だったのだろう」と推測する。
赤羽さん自身、70年代に、当時小学生だった長女に歌わせてみたところ「なのなのな 赤とんぼ 白とんぼ 柿の種 玉手箱……」と、次々に知らない言葉が出てきて驚いたという。「もちろん、5音や7音はリズムがいい。でも、むしろ奇数であることがポイントかもしれない」と話す。
AとBとの二者択一の場合、ABABA、BABAB−−といった具合に奇数回、指を差していけば、結論(最後に選ぶもの)は必ず変わる。「今の子どもは、実は心の中では欲しいほうが決まっていて、そちらに落ち着くまで言葉を続けているのではないか」と、赤羽さん。「私たちの子どものころは、神様の言うとおり、でおしまいだった。言葉通り、神様に従っていたんですよ」=「遊び編」(下)は中旬に掲載します。(え・菅野庸平)
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◇「どれ(どちら)にしようかな……」に続く言葉ランキング(数字は都道府県数)
<1>柿の種 32
<2>鉄砲撃ってバンバンバン 26
<3>なのなのな 21
<4>あべべのべ 18
<5>あぶらむし 13
<6>あのねのね 11
<7>ご飯粒 8
<8>玉手箱 7
<9>あぷぷのぷ 6
<10>赤とんぼ 5
毛虫 5
◇ベストテン入りを逃した主な言葉
●「誰かに聞く」系
隣のおばさんに聞けば分かりますよ▽裏のごんべいさんに聞いたら分かるぞね▽とことんびの言うとおり▽じっちゃかばっちゃかの言うとおり−−など
●「同じ音の繰り返し」系
かっかっかーのかっかっか▽げげのげのげげげのげ▽ぺんぺらぺんのぺんぺんぺん▽あっちちのちのちの▽すっぽこぽんのすっぽんぽん−−など
●「豆・色豆」系
赤豆、黒豆、白豆、青豆のいずれか二つに南京豆、天の豆、さんど豆、茶色豆などをくっつける。「赤豆、青豆、南京豆」など
●「その他色」系
赤いちょうちん白いちょうちん▽だいこん食べてまっしろけ にんじん食べてまっかっか
毎日新聞 2006年12月6日 東京朝刊